スティーブン・キング『アンダー・ザ・ドーム』上下(文藝春秋)読了

メイン州の小さな町チェスターズミル。人口およそ二〇〇〇人。その町は突如、透明の障壁に囲まれた。上方は高空に達し、下方は地下深くまで及ぶ。“ドーム”と呼ばれるようになった障壁は、わずかな空気と水と電波を通すのみ。パニックのなかで、命を落とす者が連続する。そこで動き出すのは町を牛耳る男ビッグ・ジム・レニー。警察力を掌握したビッグ・ジムは混乱に乗じて恐怖政治を開始した。“ドーム”のなかで一触即発の内圧が高まりはじめる―。(「BOOK」データベースより)

上下巻700P二段組みという大長編。しかしさすがはキング、飽きさせることなく一気呵成に読ませる。久しぶりにモダンホラーの王道な物語。閉鎖された小さな町の人々が追い詰められていく様子をキングらしい細かいディテールで描いていく。暴力的な支配とそこに巻き込まれていく町民たち、そしてそれに抗う一握りの人々。バービーという主人公はいるがどちらかというと群像劇。様々な視点の物語が交錯し彼らの行く末がどうなるかハラハラと見守っていくこととなる。基本は権力を握りたい冷酷なビッグ・ジム・レニーと戦う良心的な人々という善悪の対峙ではあるのだが、単純に割り切れない「人」というものも描く。善悪の両方を内包するのが「人間」であると、その側面も描いていく。
中心になる人物もキャラが立っているが脇役にも魅力的な人物が揃っている。とはいえ群像劇であるために深く掘り下げらきれてないきらいがありそこがちょっと残念。キング独特の人の哀しさみたいなものがもうひとつ伝わってこない。またいくらなんでも終盤に人が簡単に死にすぎ。死は平等とはいえ…えっ?そのキャラを殺しちゃいますか?な…。のわりにドームの真相や解決方法が少々肩透かし。『IT』ほどではないけどね…。でも人の描き方としては『IT』のほうが好きかなあ。というか個人的に初期〜中期作品の哀切さが好きすぎるのだ。でも久しぶりにキングらしい物語ではありかなり楽しい読書でした。

アンダー・ザ・ドーム 上

アンダー・ザ・ドーム 上

アンダー・ザ・ドーム 下

アンダー・ザ・ドーム 下