スチュアート・ネヴィル『ベルファストの12人の亡霊』(RHブックス・プラス)

かつて北アイルランド共和派のテロ実行役として恐れられたフィーガンは、和平合意後、酒に溺れる日々を送っていた。彼を悩ませるのは、常につきまとって離れない12人の亡霊。すべてのテロ犠牲者だった。その苦しみから逃れるため、フィーガンは亡霊たちが指差すままに、テロ工作の指令を出した昔の指導者や仲間をひとり、またひとりと殺していくしかなかった。彼の不可解な連続殺人が、危うく保たれていた各勢力の均衡に大きな亀裂を生じさせることに!(武田ランダムハウスジャパンhttp://www.tkd-randomhouse.co.jp/books/details.php?id=934)

IRA兵士の視点から北アイルランド紛争における複雑な人間関係、政治的背景が描かれていきます。テロで罪のない人をも殺してきたフィーガンが自責の念を抱え幽霊が指し示すままにまた人殺しを重ねていく。幽霊たちがフィーガンが作り出した幻影ではないところが面白い。かといって、いわゆるゴースト物ではなく物語は地についたサスペンス。人間模様の描きこみが緻密で読み応えがあります。特に前半の語り口が非常に趣きがあって良いです。後半にいくにつれ普通のアクションものぽい語り口になってしまうのが少々残念かな。精霊の存在が内省を促す流れはどことなくディケンズクリスマス・キャロル』を髣髴させます。

ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)

ベルファストの12人の亡霊 (RHブックス・プラス)