読売新聞「女殺油地獄」10年ぶり再演 染五郎「成長見せる」

ル テアトル銀座『二月花形歌舞伎』の『女殺油地獄』の記事、また出ました。今回は読売新聞。にしても染ちゃん、相当気合入ってますねえ。サイトのほうでは素顔の写真も載っていますがそのキャンプションに「「『芝居の作者は、この俳優のためにこの作品を書いたのだ』と観客に納得してもらえるような演技を見せたい」=永井哲朗撮影」と。染ちゃんがここまで言うのは珍しいかも。

女殺油地獄」10年ぶり再演 染五郎「成長見せる」


1日からル・テアトル銀座


 市川染五郎(38)が、2月1日から25日まで東京のル・テアトル銀座で上演される近松門左衛門の名作「女殺油地獄」で、主人公の与兵衛を演じる。

 道楽息子が、恩ある女性を殺すまでを演じる難役。10年前に初めて演じて以来の再演に、「10年の芸の蓄積、成長を見せたい」と意気込む。


 染五郎が初演したのは、2001年の博多座(福岡)と歌舞伎座(東京)。長年、与兵衛を当たり役とした片岡仁左衛門に教わり、上方色の強い名作に挑んだ。「うち(松本幸四郎家)に縁のなかった芝居なので、初演は思い切りぶつかった。今回、『もう一度演じていいよ』というお許しを頂いたように思う」


 大坂の油屋の息子である与兵衛は、父母の意見を聞かず、遊女に入れあげて遊び歩く毎日。暴力沙汰になって勘当され、親切な同業者の女房のお吉に借金を頼むが断られ、激高して殺す。こぼれた油に足を滑らせながら激しくもみ合う殺しの場面が見どころだ。


 「約300年前の作品でも、現代的な要素に満ちている。与兵衛は若者の無責任さの象徴。無軌道で、ささいな理由でキレる。この種の若者は江戸時代から変わらない」と染五郎。「起伏に富んだドラマなのも魅力。様式美だけではない歌舞伎の魅力を感じてもらえるはず」。「その場その場を生きる」役に自らを重ね合わせ、役に没入して演じる心積もりだ。


 原作は文楽作品。染五郎は、文楽の丸本(台本)を読み込んで作品世界の理解に努め、いかにせりふや動きで表現するかを熟慮している。もっとも心が動いたのが、殺しの場面だ。


 「おどおどしていた与兵衛が一変してお吉を追い回して殺す。主人公のサディズムが表れている。単なる陰惨な場面ではない」と考え、無意識に殺しを楽しんでしまう人物像を演じたいという。


 昨年は、「熊谷陣屋」の熊谷直実を初役で演じるなど、積極的に活動。若手を先導し、押し上げる貴重な人材だ。「たとえ不安があっても舞台に立つ責任のある年齢。自信を持って舞台で演じるようになりたい」と語る。「先輩の芝居を貪欲に吸収した。今は充実期だと思うので、満を持して臨む」


 「油地獄」は第2部。第1部は市川亀治郎の「お染の七役」。(電)0570・000・489。(塩崎淳一郎)
(2011年1月31日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/trad/20110131-OYT8T00379.htm