マリオ・バルガス=リョサ『緑の家』上下(岩波文庫)

砂の降りしきる町の娼家「緑の家」、密林に覆われた尼僧院、インディオの集落。ペルー社会の複層性さながらに交錯する現代・中世・古代。盲目のハープ弾き、飲んだくれ、日本人の流れ者、そして女…。市民的規範には無縁のしたたかな人物群が多様多彩に躍動乱舞する。―ラテンアメリカ文学の豊かな土壌に育くまれ、前衛的な手法を駆使して濃密に織りなす、物語の壮大なる交響楽。(「BOOK」データベースより)

読むのが大変でした。複数の本を並行読みしているような感覚に陥った物語です。複数の物語を混ぜ合わせ時系列をバラバラにしてすべてを同列に語るという手法。地の文と会話文の区別もつけないので非常に読みづらい。慣れてくればその場、その場はわりとすんなり読めるのですが物語の関連性を掴むのが大変。結局私は途中からおおざっぱな読みになってしまったかも。そのせいか読み終わっても複数の物語が交差する部分も多々あったのは判るのですが全体図がみえません…。正直なところを言えば、時系列や複数の物語をあちこちに散らばした効果がよくわからなかった。物語を交錯させるのはいいとして時系列通りにしたほうがより物語が濃密に伝わってきたような気がする。こういう物語にテーマを求めたい私がいけないのかしらん。ただ、その場その場の物語を享受せよ、ということなのかもしれません。

大きく言えばペルーの密林地帯と海岸地方の町ピウラを舞台にしたそこに生きた人々の物語ということでしょうか。私がとても印象に残った物語はボニファシアという女性の物語。インディオの少女が白人社会に連れてこられ、そこで生きていく。原住民と白人の文化の対立や、人としての生き様の変わりなさなど、非常に面白かった。

緑の家(上) (岩波文庫)

緑の家(上) (岩波文庫)

緑の家(下) (岩波文庫)

緑の家(下) (岩波文庫)