村上春樹『1Q84 book3』(新潮社)

そこは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、孤独に染まることのない場所だった。(新潮社:http://www.shinchosha.co.jp/book/353425/)

友人からの借り本。感想は…です。ハルキくんはハルキくんでした。book1&2より男の子ドリーム入った青年マンガぽい物語がますますエスカレートしてた…。以下、ネタばれ、毒吐きです。村上春樹ファンの方は読まないほうがいいです。
この本には他者の痛みへの共感が無い。この人には被害者(幼児虐待・女性への暴力)側の視点が欠けている。物語の根底にある論理がいつでも加害者側の論理。あちらが誘ってきたから、幼児は単なる人形(ヒトガタ)だったから、傷つくような感覚を持ち合わせてないから、そんな言い訳だらけの小説だった。もしかしたらDVに関することをどこかしらで突っ込んで書いてくれるかも、という淡い期待があったのだけど、そういう社会的な部分の検証はまるでなしでした。忘れさられている。主人公たちの周囲にいるのはただのヒトガタで傷つかない存在のようです。自分たちだけが傷ついていて舐めあいたい、それだけの物語でした。
また、結局のところ同一価値観のコミュニティを守ることへのシンパシーが強い。牛河が殺される、それを誰もなんとも思わない。某弁護士一家殺人を私は思い出した。大事なものを突き止めたから、だから殺す。それが主人公側の論理で事が進む。村上春樹は「アンダーグラウンド」でサリン事件の被害者たちを取材したのではなかったっけ?私は読んでないけど、それは糧にはなってないんだね。この本で村上春樹は被害者たちに共感できてたんでしょうか?

1Q84 BOOK 3

1Q84 BOOK 3