ディーン・クーンツ『オッド・トーマスの受難』(ハヤカワNV文庫)

死者の霊が見える青年オッド・トーマスのもとに、知り合いの医師の霊が現われた。霊に導かれて彼の家に行ったオッドは医師の死体を発見する。そして医師の養子でオッドの親友のダニーがいないことを知った。彼は誘拐されたのか? 家に潜んでいた男にオッドは襲撃されるが、友人の警察署長が駆けつけ、難を逃れた。やがてオッドはダニーの行方を追い始める。だが行く手には死の危機が!(早川書房http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/31206.html

『オッド・トーマスの霊感』の続編です。前作で負った心の傷が癒えてないオッド・トーマスにまた難題が突きつけられます。前作に比べると親友のダニーを助け出すという一点方向に向きだいぶシンプルで捻りがあまり無いという部分で読み応えは前作に譲りますが、それでもひたむきに生きる人たちへの優しい視点での物語がとても素敵です。オッド・トーマスの心優しい正義感や悩めるものへの共感が物語を動かしていきますが、それは決して明るいものではありません。哀しく切ないものに彩られています。それでも先へと行こうとする彼の人生を見届けたい、そういう想いにかられた作品でした。今作でもプレスリーの幽霊がいい味を出しています。またオッドの周辺にいるジコ・ムンド優しい人々も魅力的。ただラスト、オッドは支えてくれる人々の元を離れることになります。彼にとってはまだまだ辛い内省の物語になっていきそうですね。

オッド・トーマスの受難 (ハヤカワ文庫 NV )

オッド・トーマスの受難 (ハヤカワ文庫 NV )