スティーグ・ラーソン『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』上下(早川書房)

月刊誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、大物実業家ヴェンネルストレムの違法行為を暴露する記事を発表した。だが、名誉毀損で有罪になり、彼は『ミレニアム』から離れることになる。そんな彼の身元を大企業グループの前会長ヘンリック・ヴァンゲルが密かに調べていた。背中にドラゴンのタトゥーを入れ、特異な風貌をした女性調査員リスベットの働きで、ヘンリックはミカエルが信頼に足る人物だと確信し、兄の孫娘ハリエットがおよそ40年前に失踪した事件の調査を彼に依頼する。ハリエットはヘンリックの一族が住む孤島で忽然と姿を消していた。ヘンリックは一族の誰かが殺したものと考えており、事件を解決すれば、ヴェンネルストレムを破滅させる証拠資料を渡すという。ミカエルは依頼を受諾し、困難な調査を開始する。(早川書房http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/117235.html)

図書館から借り本。
最近のスウェーデン発のミステリはレベルが高いかも。社会との関わりの部分をしっかり描いている作品が多いような気がします。

この作品も経済界の巨悪を暴く社会派の部分と少女失踪に絡む連続殺人の謎解きの両方をバランスよく扱っています。そこに個性的なキャラクターたちが絡み、ストーリーテイリングの上手さもありなかなかの読み応え。ただ欲張りすぎて物語の核がしっかりせず、そのせいでご都合主義な部分などがアラとして浮かび散漫な印象も与えるのがもったいない。題材がかなり重いものを扱っているのだけど軽く感じてしまうのよね。ただ、初めて小説でこれだけ書き込めるのは大したもの。暴力に対しての憤りというものが男性の作家にしてはかなり強く出ている感じがあり個人的にはそこが好ましい。二部、三部も読んでみよう。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 上

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下