トム・ロブ・スミス『チャイルド44』上下(新潮文庫)
スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた……。(新潮社:http://www.shinchosha.co.jp/book/216931/?select=pop)
面白かった!海外ものに抵抗ない人には是非読んで欲しい。粗はあるけど傑作!
08年度CWA最優秀スパイ・冒険・スリラー賞を受賞作。ロシアでは発禁本になったとか…わからないでもない。ソ連で実際あった事件(80年代の事件だそうです)をベースに年代を50年代のスターリン体制下に置き換えた小説。社会主義国家体制の元、建前として「犯罪」はない、とする国家。主人公のレオもその国の建前を信じている人物。そんなレオが部下に陥れられ、現実を突きつけられていく。左遷させられた先で、子供たちが次々と殺されていっている連続殺人事件の存在を知ったレオは犯人を追おうとするが、事件を追うこと自体が国家反逆になる社会のなか彼自身が国家保安省に追われることになる。
監視体制下にある人々がどういうメンテリティになるのか、また極限下のなか人として生き延びるということがどういうものか、という部分が書き込まれているので普通の大量殺人ものとは違う重さがありました。
- 作者: トム・ロブスミス,Tom Rob Smith,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/28
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