平野啓一郎『顔のない裸体たち』(新潮文庫)

ごく平凡な女教師・吉田希美子は、出会い系サイトで知り合った男との行為にのめり込んでいく。男は自分たちの性行為を録画撮影して、インターネットのアダルトサイトに投稿する趣味があった。ネット上を歩き回る淫らな彼女の顔にはモザイクがかかっていて、誰にもわからないはずだった。事件が起きるまでは……。(新潮社:http://www.shinchosha.co.jp/book/426005/)

平野啓一郎芥川賞の『日蝕』を読んで以来です。最新作『決壊』が評判良いのでなんとなく読んでみようかなと思ったんですがハードカヴァーだし高いしで躊躇。文庫落ちした『顔のない裸体たち』のほうを手に取りました。『日蝕』とはだいぶ趣きが違う作品ですねえ。文章はかなり上手くなっているかも。この作品は性描写がかなり露骨。かといってポルノ小説に陥ってないところが上手いところかもしれません。第三者の視点で淡々と描き、ルポルタージュ風な小説。題材的にいいところを拾ってきたという感じですし面白かったんですが全体的に印象が薄い。登場人物二人が内省することのないキャラクターということになっていて、それがそのままに描かれるので小説としては薄い感じになったせいかも。所詮ネット人格の薄さ、みたいな部分で意図的描いたのだったらこういうのもありかなとは思うんですがもう少し何かほしかったところです。

顔のない裸体たち (新潮文庫)

顔のない裸体たち (新潮文庫)