エリン・ハート『アイルランドの哀しき湖』(ランダムハウス講談社文庫)

アイルランドの泥炭湿地から、“三つの死”の儀式を施された鉄器時代の遺体が出現した。解剖学者ノーラは、その保全作業を手伝うため現地に赴く。ところが近くの地中から、同じく“三つの死”の儀式を施された現代の遺体が見つかった。それを皮切りに、ノーラのまわりで次々と不可解な殺人事件が発生する。しかも恋人である考古学者コーマックがその連続殺人事件の容疑者となってしまい・・・・・。『アイルランドの柩』待望の続編! (ランダムハウス講談社:http://www.randomhouse-kodansha.co.jp/books/details.php?id=446)

前作『アイルランドの柩』と同様に昔の遺体と現代の遺体の類似を探ることで事件を解決していくという流れです。しかし前作に比べ「歴史を探求する」という部分が少々減って現代の物語が中心。相変わらずアイルランドの生活描写などが魅力。ただ肝心のミステリの部分があれこれ手を広げすぎ、ちょっと無理矢理な部分があって散漫。ただ、そのなかにあってキーとなるブラジル一家の物語は印象的。彼らの物語だけを追う形にしたらミステリとしても締まっただろう。エリン・ハートの「家族」の描き方はなかなか深いものがあります。

アイルランドの哀しき湖 (RHブックス・プラス)

アイルランドの哀しき湖 (RHブックス・プラス)