三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』(ポプラ社)

三浦しをんを読むのはお初です。直木賞作家ということは知っておりますがどういう小説を書いてる人かは知りません。最近、日本人作家にかなり疎くなっているかも…。


この本は小説ではなく、三浦しをん文楽入門書です。超ミーハーなことを隠さず書いてます。ある意味見事。半可通な某作家の文楽入門本より文楽へのミーハー愛が素直な分、気持ちよく読めました。文章も平易だし、「文楽」がどういうものなのか非常にわかりやすく書いている。ただ、これを伝統芸能初心者に読ませるとなると悩ましい問題もはらんでいる。たぶん、三浦さんという方はサブカル系な人なんだと思われる。文楽をいわゆる同人系の視点で解説してる。芝居の本質の部分以外の妄想突っ込みが豊か。文楽をツッコミながら解説している章など文章が上手なだけにかなり楽しい。私もその気(同人視点)があるので大笑いしながら読んだ。


でも、これってあくまでも脇道での楽しみ方だと思うのだ。それを自覚したうえで観るならまったく問題はない。この見方のほうが感覚的に見られるし、物語の背景を知ろうとしなくても楽しめる。文楽にしろ歌舞伎にしろ、現代人から見たら確かに感覚的にツッコミたくなる話が多い。でもまずは「物語の核」の部分を拾おうとする努力もして欲しいと個人的には思う。そういう意味で、初心者にオススメするのには三浦さんのミーハー視点が楽しすぎるだけに、ちょっと躊躇するなと思った本でもあった。ある程度「文楽」や「歌舞伎」を楽しんでる人にはオススメです。バランスの良い入門書を書くというのは難しいのですね。

あやつられ文楽鑑賞

あやつられ文楽鑑賞