染五郎が復活狂言「清水一角」

12月国立歌舞伎の染ちゃんへのインタビュー記事です。『清水一角』は46年ぶりの復活狂言で当時の出演者がおらず一から作るそうです。染ちゃん、これからも新作、復活狂言とも手がけていきたいとのこと。嬉しいな。

染五郎が復活狂言「清水一角」


駄目人間が一転凛と

 
忠臣蔵に着想を得た作品を3本並べた企画公演「それぞれの忠臣蔵」が、12月3日から26日まで、東京・三宅坂国立劇場で上演される。その一つ「清水一角」で、市川染五郎が、吉良上野介家の警備役の武士、清水一角を演じる。(塩崎淳一郎)


 酒好きの一角は、同役(中村歌六)の宴席に乱入。帰宅後も、そんな一角の行動を諭す姉のお巻(中村芝雀)の意見を聞かず、寝入る。夜中、赤穂浪士の討ち入りを告げる太鼓の音を聞いた一角は、跳ね起きて吉良邸に向かう。


 河竹黙阿弥作で、今回は46年ぶりの復活。「当時の出演者がおらず、一から役を作る苦労があります。国立劇場に残る上演台本や写真、役者が書き留めたメモなどを頼りに、僕なりの工夫を凝らします」と意欲を語る染五郎。「初役としての重圧がある。今後も上演が続くような作品を目指したい。上演記録として残るので、楽な仕事ではありません」と表情を引き締める。


 「黒御簾(みす)音楽の曲に乗って立ち回りをしたり、酔いに任せたせりふを吐いたり。ユーモラスな駄目人間ぶりを強調するから、太鼓の音で人間が一変する効果が高まります。一角は男臭く、やぼったい。だが、太鼓で酔いをさまして素早く出立する場面は、一転して凛(りん)とした姿勢を表現したい」


 この企画公演では、中村吉右衛門主演「堀部彌兵衛」「松浦の太鼓」も上演され、後者では、討ち入りの様子を隣家の大名(吉右衛門)に語る、浪士の大高源吾を演じる。「観客に頭の中で想像してもらえるように報告する大事な役。こちらも初役で重圧です」


 今月の歌舞伎座では、「仮名手本忠臣蔵」の九段目「山科閑居」が上演中。こちらでは大星由良之助の息子、力弥を務める。「討ち入りに向かっていく高揚感のある作品で、力弥のはかない恋もあり、所作やせりふを丁寧に演じることで、観客に心情を伝える難しい役です」


 忠臣蔵関連作への出演が続くことについて、「日本人の心の琴線に触れる作品だからこそ、国立で上演するような外伝にも名作が生まれる。歌舞伎座で演じていても、お客様の反応に手応えを感じます。数限りなくあるドラマに、やりがいを覚えます」と語る。


 「今後も新作や復活狂言をやりたい。歌舞伎の可能性はまだまだあるはず。古典でも、完成作を分解して演出法などを突き詰めて考える勉強をしています。いつか、自ら歌舞伎の作品を書き、演出したいという思いがあるから」。力のこもった言葉から、あふれる情熱が伝わってきた。(電)0570・07・9900。

(2007年11月19日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/stage/trad/20071119et02.htm