有吉佐和子『一の糸』(新潮文庫)

うわあ、いかにも有吉佐和子だなな小説でした。いやはや、上手いね。どう展開していくのかの引きが強い。また「女」の描きかたがとにかく「女」なんだよね。その俗ぽさ(悪い意味ではないです)が、特殊なわかりずらい世界の話を身近にするのだろう。『一の糸』では文楽の世界を描いています。


文楽に興味がある人はぜひ読んでください。芸道というものの魔を垣間見ることができます。芸道に生きると男とそういう男に惚れてしまった女の物語。『一の糸』での女の生き様と男の生き様の乖離が「物語」として少々分裂してしまい、小説としてうまく消化されてない部分があります。しかしそれだけに、芸道を生きる人とその周辺に生きる人の生きる道が同じではない切なさみたいなのも浮かんできます。

一の糸 (新潮文庫)

一の糸 (新潮文庫)