チェーホフ『桜の園・三人姉妹』(新潮文庫)

こまつ座&シス・カンパニー公演『ロマンス』の影響でチェーホフを再読したいなと思ったのがきっかけ。再読と言っても学生時代以来なので細かいとこ完全に忘れてました…。で、覚えていなかった最たる言葉は「喜劇」。この作品にチェーホフは「喜劇」って書いているんですよ。なるほどいのうえひさし氏が『ロマンス』でチェーホフはボードビルがやりたかったんだと繰り返し主張させた理由がよくわかりました(^^;)


私、学生時代にこの戯曲を読んだ時の印象は「郷愁と哀切」。で今回、改めて読んでも同じ。「喜劇」としてどうしても捉えられない。『三人姉妹』はかろうじて悲喜劇として捉えられるし、ボードビルにできるな、とは思ったんですが…。でも『桜の園』はどこをどうすれば喜劇仕立てに出来るのか?「喜劇」としての解釈をどこに読めというのか…。同時代性というものに関係するのだろうか。もしかしたらチェーホフの生きた時代には喜劇としてしかありえない物語設定、人物設定だったのだろうか?普遍的な部分で読んでしまうと、この作品には去り行く時代への哀しみがある。右往左往する登場人物たちに滑稽さ見出すことも可能だけど、でもそれ以上に「時代」というもののなかで生きてきた、生きていかなければならない哀切さのほうを強く感じてしまう。


チェーホフの戯曲がこんなに解釈が難しいものだとは思わなかった。今までは字面だけで(小説として)読んでいたので、芝居にするものとして読んだ時に「これは大変」と思いました。時代を知らないと、とにかく芝居としての情景描写が浮かんでこない。しかもキャラクターたちにはアクはあるのだけど肉付けが薄い。演出、役者によってかなり変化しそうな戯曲だ。

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)