アヴラム・デイヴィッドスン『どんがらがん』(河出書房新社)

奇想コレクションのなかの一冊。アヴラム・デイヴィッドスンの全16篇からなる短編集です。ミステリ作家の殊能将之さんが偏愛する作家ということで、この本の編者になっています。私はSFセミナー2007の『アヴラム・デイビィットスンの思い出を語る』での奥様のお話が楽しくて、興味を惹かれて購入しました。


奇想という他に言いようのない短編ばかりです。読んでる途中でも思ったんですが、全部読んでみて、やはりいわゆる作家の個性があんまり感じない短編集でした。様々なタイプの小説が並び、一貫性がない。アイディアを思いついたらそのアイディアに相応しいあれこれを味付けして書いてる感じがしました。短編集を読んだというよりアンソロジーを読んだというような読後感です。私が好きな作品は『ゴーレム』、『ラホール駐屯地での出来事』、『尾をつながれた王族』、『サシェヴラル』、『グーバーども』、『そして赤い薔薇一輪を忘れずに』あたり。ファンタジィーぽいものやホラー風味なのが並んだかな(笑)個人的には超ツボ、という作品はなかったのですがそれぞれユニークで面白い作品が並んでいたと思います。


作品群のなかで『ナポリ』のオチがさっぱりわからなくて、モヤモヤ感が残りました。ナポリの路地裏の描写は楽しかったです。実際ナポリの路地を怖々うろついた身としては情景が浮かんできて、旅行の思い出を喚起させてくれたので、途中まではワクワクしてたんですけど…誰かこのオチの説明をしてくださ〜い。