マシュー・パール『ダンテ・クラブ』上下(新潮文庫)

1865年、南北戦争直後のアメリカ、ボストンで起きた猟奇殺人事件。様々な圧力を受けながらもアメリカでの初翻訳を目指す「ダンテ・クラブ」の面々は、その殺人事件がダンテ『神曲』「地獄篇」を模しているのに気が付き…。


史実を元に実在した人物たちを使って、南北戦争直後のアメリカを取り巻く状況を歴史ミステリとして描いた作品。文学界の内輪の問題という部分のみならず、人種問題、戦争体験の傷といったアメリカという国が抱える問題が描かれる。最初のうちは人物関係を把握するのに戸惑い読書ペースが上がらなかったのですが途中から一気呵成。あれこれ盛り込みすぎかな、とも思うのですが、単なる謎解きにしなかったところを評価したいです。また作者がダンテの研究者というだけあって、当時のアメリカの文学界の状況やダンテ『神曲』の薀蓄もかなり面白い。ダンテ『神曲』を読んでみようかとさえ思いましたが、私に読めるかな(笑)

ダンテ・クラブ〈上〉 (新潮文庫)

ダンテ・クラブ〈上〉 (新潮文庫)

ダンテ・クラブ 下巻

ダンテ・クラブ 下巻