ジェフリー・フォード『ガラスのなかの少女』(ハヤカワHM文庫)

アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞作です。「禁酒法時代」「降霊会」って文字を見ただけで手に取りました。この時代を描いた作品は大抵ツボなのです。幻想系がかなり入ってるのかとの予想とは違い、冒険探偵小説であり少年の成長譚ものという感じでした。登場人物がインチキ霊媒師や、フリークスたちだったりして1930年代アメリカ社会のなかではみ出した人々が中心となった物語。人種問題も絡み、主題は結構深刻なのですが、そこをエンターテイメントとして面白く仕上げています。非常に映像的な文章です。「蝶」が印象的に使われていました。また「降霊会」のトリックもしっかり描かれており主人の少年の父代わりのシェルの詐欺師として自覚的な生き様が魅力的でもありました。

ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)