2006年観劇総括

今年は歌舞伎45回、文楽6回、演劇7回、クラシックコンサート8回のトータル66回です。ほとんど歌舞伎ですね…。今年1年を振り返って印象に残ったことを。役者の敬称は略。


【1月】
なんといっても歌舞伎座坂田藤十郎襲名披露の『伽羅先代萩』が素晴らしかったです。坂田藤十郎の底力を思い知らされた感じ。これぞ丸本物という醍醐味を味あわせていただきました。「床下」の荒獅子男之助@吉右衛門と仁木弾正@幸四郎の対決も見ものでした。また、NODA MAP『 贋作・罪と罰』が言葉の力、美しさを感じ、印象深く残りました。
【2月】
私的に2月は歌舞伎座幸四郎につきる。『一谷嫩軍記』「陣門・組打」と『梶原平三誉石切』の解釈と演出が非常に面白かった。また座組みのバランスをよく考えているなとも思った。舞台の空気がとても密だった。
【3月】
良くも悪くもPARCO歌舞伎『決闘!高田馬場』に振り回された月だった。出演している役者全員のことが大好きで、しかも大の贔屓の染五郎が座長の芝居なのに「好き」になりきれない歌舞伎でした。そういう意味では「どうして大好きになれないのだろう」といまだに喉にトゲが刺さってる感じ。歌舞伎座では福助幸四郎の『義経千本桜』「吉野山」が印象に残っている。「みせる」ことのできる二人の役者のみせた踊りだった。絵面の押し出しが強かったなあ。
【4月】
コンテンポラリーダンスがこんなに面白いものだったなんてと『ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団』に衝撃を受けました。とても刺激的だった。名古屋御園座勧進帳』の義経芝雀が素晴らしく役者として一皮向けたと確信。
【5月】
新橋演舞場染五郎亀治郎の舞踊『寿式三番叟』が面白かった。歌舞伎舞踊でこれほど気持ちが昂揚したのは初めてだったかもしれない。染五郎亀治郎の丁々発止のテンションの高さ。また竹本、鳴り物の演奏者たちの気合の入り方も半端じゃなかった。なんだったんだ、あれは!という感じ。福助の『京鹿子娘道成寺』、亀治郎の『火の見櫓の場』の情念溢れる舞踊も印象的。文楽『生写朝顔話』の蓑助さんの深雪のほとばしる情念も凄かった。男が踊り、操る「女の情念の深さ」に女の私が共感を覚える、その伝統芸能の不思議さよ。
【6月】
歌舞伎座の『暗闇の丑松』がかなり好みでした。フィルムノワールを観てる感じがした。幸四郎福助コンビ、もしかして好きなのかもしれない。また照明の使い方とセットは一見の価値ありだった。『双蝶々曲輪日記』の染五郎の放駒長吉がキュートすぎてツボに入りまくり。
【7月】
ヤン・ファーブル演出『主役の男が女である時』に感覚的な共感。すこんと何かが突き抜けた感じがしました。
【8月】
それなりに楽しんだんですがこれぞ、というものが無かった月でした。
【9月】
歌舞伎座の秀山祭に燃えに燃え(萌えに萌え)ました!『寺子屋』の幸四郎吉右衛門の兄弟ガチンコ勝負。あの緊迫感溢れる舞台は見事でした。幸四郎の表裏含んだ台詞回しの巧みさに惚れ惚れ。『籠釣瓶花街酔醒』の福助の哀れな八ッ橋は絶品だった。吉右衛門の次郎左衛門の鬱積した怒りには鳥肌が立たった、まじで怖かった。芝雀の3役(お早、皆鶴姫、九重)すべてが目を見張るほど可愛らしく素敵すぎで萌えまくり。染五郎の松王丸→文屋→虎蔵→更科の前の4役の変身振りにも萌え。特に更科の前の姫ぷりに落ちました…萌え。
【10月】
なにはともあれ、マウリッツオ・ポリーニのピアノ・リサイタル。音、音、音。音楽は喜びだ、と心から感じさせてくれる演奏家。そして大阪松竹座『染模様恩愛御書』、とにかく楽しかった。楽しすぎて私のどこかが壊れました(笑)『弁慶二態』の吉右衛門の弁慶は今までの吉右衛門弁慶のなかでは一番の出来かと。弁慶そのものといった気迫。
【11月】
ロシアパワーにやられました。ワディム・レーピンのヴァイオリンの音色に惚れました。サンクトペテルブルグフィルハーモニー交響楽団の演奏にはただただ圧倒させられました。ビバ!クラシック音楽。巡業『勧進帳』が思っていた以上に面白くて満足。信二郎があれだけやれるとは、予想以上の出来。幸四郎の弁慶はMy Best弁慶ではないのだけど観てるうちに愛着が出てきてしまった気がする
【12月】
歌舞伎座菊五郎のお玉がツボ。もしかして私の好きな菊五郎が戻ってきたかも〜〜〜。こんなことなら11月の政岡も見るべきだったかも、と後悔。10月〜12月の3ケ月通し上演『元禄忠臣蔵』を完走し満足。国立劇場、頑張ったねえ!