ジョン・ランチェスター『最後の晩餐の作り方』(新潮社文庫) 

イギリス人なのにフランス贔屓なタークィン・ウィノットは南仏で短い休暇を楽しんでいるその道すがら自分の思い出の食べ物について書き留めていく。その料理エッセイ風な文章で食に関する豊富な薀蓄と自らの過去を饒舌に語るうちに…。


ひとつの文章のセンテンスが異常に長いです…私も人のことは言えませんけど…。だらだらと書き綴られる薀蓄が少々うっとおしいと思う向きにはオススメできません。食に纏わる薀蓄はお見事なのに描かれている食事が美味しそうに感じられない、喜びに満ちていない。料理エッセイとしては失敗だろうと思っていると、なるほど主人公タークィンは一筋縄ではいかない捻くれぶり。何か変?そう感じ始める頃に物語は一気に進んでいきます。ほとんどブラックジョークなミステリ風味の物語。ミステリ読みにはオチはすぐに知れるでしょうがクセのあるお味がお好きな読書人にオススメです。