奥泉光『グランド・ミステリー』上下(角川文庫)

奥泉さんお得意の現実と虚構の境界世界の物語。国の歴史、個人の歴史、運命に司られているのか、意志が動かしていくのか。何重にも仕掛けられた謎。この多重構造の物語は一回読んだだけでは咀嚼しきれない。物語を引っ張っていく冒頭の事件の謎は綺麗に収斂されていく。が、時空の流れは混沌としたまま。歴史認識の苦さに胸が詰まりました。私的に要再読本。