歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』観劇。歌舞伎系blogなどで夜の部の感想はサクッと拝見していたのだけど、期待していた『暗闇の丑松』がどうも評判がよろしくない。舞台が暗すぎて、お話暗すぎて、ということらしい。まあ、お話は暗いけどね、と思いつつ拝見。百聞は一見にしかず、ですね。面白いじゃないですか!舞台美術、照明、転換、音、の演出の妙が素晴らしい。あの暗さを「単に暗い」と思う観客が多いのが残念だ。『暗闇の丑松』という戯曲のもつ緻密さを改めて確認。丑松というキャラクターのゆがみをそのまま提示してみせた幸四郎さんも見事。復讐譚として男の切なさを描かず、心の底に闇を持つ男の転落譚。それゆえに「女」の哀れさが前面に押し出された。その「女」たち、お米@福助さん、お今@秀太郎さんが秀逸。『六月大歌舞伎』のなかで私的に一押しです。他の役者がやったら「丑松」の一途な男の哀れさを前面に出すものになるのですが今回は「人殺し」をする男の「狂」を見せています。今回はまさしくノワールですね。


『身代座禅』は菊五郎さん、仁左衛門さんともあっさりしすぎでは?もっとたっぷりやって欲しかった。可笑し味が薄い。翫雀さんが上手い。『二人夕霧』は今月の狂言立てのなかではかなり損をしてますね。舞踊劇を二つ並べたことに疑問です。夕霧の魁春さん、時蔵さんの美しさ可愛らしさは堪能。