つらつらとパルコ歌舞伎の余韻を

しかし、こうやって染贔屓の書き込みの言葉をみると染贔屓にはやはり物足りない脚本だったんだなとの思いも強くした。あの安兵衛には長屋の皆を見殺しにして欲しくなかった、皆の思いを拾って拾って、そうして皆を救いながらも高田馬場へ向かうことをやめない、そんな安兵衛が観たかった。染ちゃんが演じるならそういう安兵衛なんじゃないか、たぶんきっと皆そう思ったんじゃないかな。それが見事裏切られた。だから私は最初、あれはアテガキであろうと染のニンではないと思いました。でも2度目に観た時からあの中心にいるのが染ちゃんじゃなければ成り立たなかったのかもとも思いました。受けの芝居に徹して前に出すぎず皆を引き立てながら主役として成り立つ華がある。そして出ずっぱりで実は一番早替わりが多く台詞も多く、一番動き回っていながらそれを微塵も感じさせず、さらりと演じ、肩で息をすることを拒む染だからこそできた役。だからそう今ではそれが出来る染五郎という役者を観ることができて満足しています。