市川染五郎という役者

市川染五郎という役者の私の個人的な評。染ちゃんは最近ニンが和事とか言われるようになってる。でも違うと思う。ようやくここ数年で芸の積み重ねで獲得してきた柔らか味なんだけどね、と言いたくなる。与兵衛みたいな直線的でも大丈夫な役ならともかく柔らかい二枚目を演じるのにどんだけ苦労していたか。反対に松王丸は20代でしっかり出来てた。見た目と違い本来のニンは実事だと思う。そこが染の苦労のしどころ。染が役としてすんなり入って見えるのは今月の伊達十だと勝元。生来の声質的にもそう。質としていわゆる二枚目ではない。見た目が二枚目なのであえて言えばニンとしては二枚目と座頭の中間にいる。だから座頭にも二枚目としてもそこを埋めるには見た目と質が一致してる人より積み重ねが必要。まあ、どちらにせよ、芸の積み重ねで幅広いものができる役者になった人はたくさんいるので、そこを目指せばいいだけね。初代吉右衛門は忠兵衛も得意とし熊谷も得意とした。私的に染五郎という役者をなぜ面白い役者だなと思って追いかけてるのは”そこ”ってものがない役者だからっていうのもあるのかも。”そこ”に辿り着く過程がたくさんある役者。


夜の部『伊達の十役』の感想、早めに書こうと思うけど、感想が頭のなかでとっちらかってる。染ちゃんの十役のうちで勘三郎さんをふと思い出す場面がいくつかあったんだけど顕著だと思ったのは政岡の後半部分だったりする。染ちゃん、勘三郎さんの『裏表先代萩』には出演してないんだけど観に行ったのかなぁ。