舞台休みなれど… 歌舞伎 松本幸四郎

東京新聞の芸能欄に<花鼓>という連載があって、幸四郎さんも執筆者のお一人です。今回の記事に染五郎さんの長男齋くんの初お目見得について書いていらっしゃいます。染ちゃんが今の歌舞伎座の舞台に齋くんを立たせてやりたいとの思いから実現したそうです。あ、やっぱりなと思いました。染ちゃん、歌舞伎座への思い入れ、深いですからねえ。幸四郎さんが初舞台の時は大泣きしたそうな(笑)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/tradition/CK2007041402008687.html

東京新聞(4/14) <花鼓>舞台休みなれど… 歌舞伎 松本幸四郎


 久しぶりに舞台のない月である。とはいうものの、六月の歌舞伎座、九月のシアターナインス十周年公演の準備や映画の撮影、テレビドラマの打ち合わせなど、毎日なにやかやと忙しく過ごしている。

 六月は染五郎の長男齋(いつき)が初お目見得をする。取り壊す前の歌舞伎座の舞台を、どうしても息子に踏ませてやりたいという染五郎の思いで実現することになった。

 かつて僕が演じた「侠客春雨傘」の暁雨を染五郎が勤め、父白鸚が初舞台の染五郎の手を引いたように、僕は齋の手を引いて舞台に立つ。

 齋は二歳になったばかり。何もかもまだ心もとないが、それでも着物を着て踊りの稽古(けいこ)を始めている。さてさて、どのようなことになるのか…。因(ちな)みに、僕は初舞台で大泣きして、大人たちを困らせた前科がある。

 十年目を迎えるシアターナインスは、オリジナル作品の「シェイクスピアソナタ」をパルコ劇場で上演することが決まっている。僕自身がシェイクスピアの四大悲劇のタイトルロールを演じているので、これを題材にした物語を岩松了さんにお願いした。チェーホフに造詣の深い岩松さんだが、僕の希望を快諾してくださって、今は台本を執筆中とのこと。連休明けの仕上がりが待ち遠しい。

 映画は秋に公開される作品で、「良寛」以来、久しぶりのことだ。

 テレビドラマは、死を宣告された男の夢の話。ここ数年、テレビでは、定年前後の悩める男を演じる機会が多い。僕としてはこの作品が、団塊の世代へのエールになればと思っている。これも放送は秋になる。

 とまあ、舞台はないが、それはそれなりに充実していて楽しい日々を送っている。 幸い哉(かな)。