泉鏡花

本日、歌舞伎座に『七月大歌舞伎 夜の部』を観に行きました。演目は泉鏡花の『山吹』と『天守物語』の二演目。淫靡、耽美、異界を感じられませんでした…。私的にかなりガッカリ。こんなに平坦でゆるゆるなお芝居でしたっけ…?私が鏡花の世界に入れなくなったのかしら?原作、久々に読んでみるか…。台詞劇って難しいんだなあと今回あらためて思いました。


『山吹』は笑三郎さん、歌六さんともに頑張っていらっしゃるんだけどニンじゃなく可哀想でした。『天守物語』は玉さんが調子悪すぎでは?声が弱すぎです。それにここ数年感じているけどやはり強烈な磁場を見せていたはずのオーラが減っている。海老くんは大人になったなと。安定感が出てきた。でも図書之助をやるにはそろそろトウが立つ寸前でもある。とはいえ涼やかな声と美貌を持つ図書之助をやれるのは今のところ彼しかいないと思う。贅沢な要求だが台詞にもっと情感を乗せられたらと思う。他の役者のなかでは奥女中の吉弥さん、侍女の京妙さんが良かったと思う。


天守物語』は何と言われようと七年前のほうが断然素敵だった。菊ちゃんの愛らしくも毒を含んだ色気のある亀姫、不安定で必死でただただ一途で美しい新之助の図書之助、飄々とした左團次さんの朱の盤坊、羽右衛門さんの大きな存在感でみせた桃六、そして何より美しさと異のオーラがピークだった玉三郎さんの富姫。私はたぶん七年前の二度と垣間見ることが出来ないあの空間に捉われてしまっているのかもしれません。今同じ配役でもあの空間は再現できないでしょう。


そういえば今回の『天守物語』でスクリーンを使用しての演出も気になりました。あそこまで懇切丁寧な演出が必要?鏡花は台詞劇だと思うので言葉で想像させる余地を残して欲しい。そういう部分も前回のほうが良かったなあ。